一般的にアナログ回路とくらべディジタル回路の利点として、経年劣化が少ない、調整が簡単、高精度、高信頼性などが挙げられます。さらにアナログ信号処理とディジタル信号処理で比べると次のようになります。
要 因 |
アナログ信号処理 |
ディジタル信号処理 |
部品精度
影響される環境
S/N比
適応性(適応フィルタ等)
量産製造
再設計
レイアウト
高度な機能
複数機能
サイズ、消費電力
信頼性 |
1〜10%
温度、時間
60dB程度
困難、非常に高価
調整が大変
新規のボードを製作
ノイズに敏感
高度なハードウェア
複数のハードウェア
大
低 |
0.003%(16Bitの場合)
なし
90〜dB
容易、低コスト
自動調整が可能
新しいプログラムを作成
通常のディジタル回路と同じ
ソフトウェアの付加
処理、プログラムの増加
小
高 |
|
近年の製品の高機能化、開発期間の短縮化によりディジタル信号処理のメリットが益々生かされています。また、ディジタル信号処理ならではの、データの圧縮・伸張、エラー訂正も可能です。コードの変更により機能を入れ換えることができる為、例えばMP3プレーヤーではプログラムをバージョンアップすることにより新しいフォーマットに対応できるなど、『ハードウェアのバージョンアップ』が可能となりました。
以下に現在利用されているディジタル信号処理を紹介します。
●汎用利用
ディジタルフィルタ、フェーズ・ロック・ループ、スペクトル分析、高速フーリエ変換、適応フィルタリング
●制御利用
高精度モータ制御、サーボ制御、ロボット制御、ディスクドライブ制御(近年のハードディスクの大容量化に貢献している。)、レーザプリンタ制御
●グラフィックス/画像利用
画質改善、画像圧縮・伸張、パターン認識、ロボット視覚、3-D回転
●産業利用
電力ライン監視、力率改善
●テレコミュニケーション(遠隔通信)利用
携帯電話、チャンネル多重化、データ暗号化、エコーキャンセラ、ビデオ会議、モデム、ディジタル構内交換、DTMFエンコード/デコード、ラインリピータ
●音声利用
音声認識、音声識別、音声合成、テキスト-音声変換、音声メール、音声圧縮・伸張
●自動車利用
アクティブ・サスペンション、ナイトビジョン、エンジン制御
など、応用範囲は無数にあります。